伝わらなければ意味がない
話す、聞くということはあまりにも日常的なことだけに、意外と深く考える機会は少ないものです。
伝えたつもりのことが相手に伝わっていなかったり、こちらの認識とズレがあったりして、なんとなくモヤモヤした気持ちが残ってしまうことはありませんか?上手に人とコミュニケーションをとるにはいくつかのポイントがありそうです。
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聞き下手な人の特徴
話をまとめたがる
『プロカウンセラーの聞く技術・話す技術』によると、相手の話を聞くのが下手な人は相手の話をすぐにまとめたがる傾向があるようです。特に男性が多いということで、僕自身も思い当たるところがあってドキッとしました。
話をまとめたがるということは、相手の話をきちんと聞くことよりも、早く自分の見解を言いたい、結論付けてスッキリさせたいという自己顕示欲や自己満足が根底にありそうです。これでは相手の話を聞くことができないのも当たり前ですね。
アドバイスしたがる
これは職場で部下にアドバイスをしたがる上司の心理にも共通します。もちろん本人は良かれと思ってしていることではあるのですが、部下にとっては単なるありがた迷惑の可能性もあるわけです。
たとえば部下が突然「会社を辞めたい」と言ってきた場合、引き止めたいという思いが強過ぎるあまり、いかにそれがもったいないことか、あるいは今の職場を辞めることのデメリットなどをまくしたてて強引に説得しようとしがち。でも部下にとっては、「会社を辞めたい」の中に「話を聞いてもらいたい」という気持ちも含まれていたりします。自分の中にある不満や不安を聞いて欲しいだけかもしれません。
そこへ一方的に見当違いなアドバイスをしてしまうと、かえって部下は「自分のことをわかってもらえない」という思いが強くなり、さらに居心地が悪くなってしまいます。
自分を良く見せようとする
自分の話し方がどのように他人の目にうつっているか、ということばかりを気にしている人は、「相手に伝わるかどうか」よりも「自分を良く見せること」が目的になっています。
自分を良く見せようとすればするほど、ボロを出してはいけないと思い、話がどんどん抽象的な内容になっていきます。また、相手に反論させまいと考えるあまり、理論武装する。そうなってしまうと相手は素直に話を聞けなくなってしまいます。
一見話し上手に見えるんだけれども、なぜかこの人の話は頭に入ってこない、というタイプの人いますよね。僕自身もそのタイプだったと思いますが、自分が話下手であるというコンプレックスがあったからでしょう。
だから何冊も話し方の本を読んで研究する。そして「話し方のメソッド」みたいなものを実践してみるわけですが、結局それが返って相手との距離を広げてしまっていたんですね。学ばなければいけないことは、カッコいい話し方ではなく、聞き手の立場になって考える「伝え方」です。
どうすれば相手に伝わるかを考えている人は、相手の理解度に合わせて表現を変えたり、具体的な例をあげてみたりと、聞き手の立場に合わせて話すことができます。
話す時のポイント
1対1編
「親しくなりたければ相手との共通点を探せ」というのも話し方の本によく書いてあるフレーズのひとつです。確かに共通の話題がある方が親しみを感じるし安心できます。ただ、もしかしたら相手には意外な趣味があるかもしれません。あるいはこちらにも、今まで話題にならなかっただけで、話してみたいと思っているコンテンツがある場合もあります。
これらは「共通点を探そう」と思っているだけではなかなか引き出せない部分です。なので、自分と違う部分はないだろうか、という視点で話をしてみると意外な発見があるものです。そのためにはまず、自分と相手は違って当り前の存在なんだという認識が必要だと思うんです。違うからこそ面白い、という姿勢で接することができれば、自分の基準だけで相手を批判したり否定する、なんてこともなくなっていきます。
1対多編
スピーチ、会議などでの発言は特定のひとりに話をするイメージを持つと緊張しにくいそうです。ある程度の人数が集まると、発言者はみんなから見られていると感じます。この「見られている」という意識が緊張を生み出すわけです。
なので、目の前にどれだけ人がいようとも、特定のひとりに話しかけるようにすれば「見る側の立場」をキープできます。特に、こちらの話に関心を持ち、時折うなずいてくれるような人がいればベストです。
なにかの本で「面接官は緊張しない」というフレーズがありました。面接を受ける人は面接官から見られる側なので、何を聞かれるだろう、おかしなことを言って失敗したらどうしよう、と緊張してしまう。一方面接官は常に面接者を見る側の立場なので、自分が想定外の質問をされたり批判されるといった心配をすることはありません。だから緊張しないわけです。
ということは大勢の前で話す場合でも、こちらが聞いてくれる人たちの方を見る側の意識でいれば緊張しにくいのではないでしょうか。1対1では平気なんだけど、1対多ではどうも緊張する、という方は、特定のひとりに対して語り掛けるようにするとかなり緊張は抑えられます。
話す内容を整理してから話し始める
話下手な人と言うのは何かスキルが足りないからうまく話ができないと思っている人も多いようです。
実際には
という基本的な情報の整理ができていないだけだったりします。逆に言えば、必要な情報が整理さえできていれば、多少話し方がぎこちなくてもこちらの意図は伝わります。
なので、話下手と思っている方はまず、自分が話そうとしていることが事前に整理できているか書き出してみることをおすすめします。僕も若い頃はよく誤解されたり聞き返されることがありました。それは僕の話し方そのものではなく、相手が求める情報を伝えられていなかったことが原因でした。
目線を合わせる
自分と違う年代、立場の人と話すときのポイントは目線を合わせることです。頭ではわかっていても、意外と難しいですね。
たとえば職場の上司。部下を気遣える上司は部下と目線を合わせることができます。だからメンタルの変化に気づけたり、若かったころの自分と重ね合わせて共感することもできる。自分のことをわかってくれる上司がいる、と思えばこそ安心して仕事ができるものです。
親子関係でもそうですね。親は当たり前のことですが子供よりずっと長く生きているし、経験もあるので上から目線になってしまうこともあります。もちろんしつけも大切ですが、親も昔は子供だったわけですから、時には子供の目線でじっくり話を聞く時間も必要なんですね。