「わかった」で人は動く
僕はパソコンの前に座って仕事をしていることが多いので、必然的にデータを集めたりそれをまとめて資料にする仕事もよく任されます。
こういうことをめんどくさいと思う方もいるかもしれませんが、僕はわりと好んで引き受けています。というのも、仕事に関することはできるだけ隅から隅まで知っていた方が自分のすべきことがはっきりするからです。
仕事は常に全体から組み立てる。これは僕が仕事をする時の基本的な姿勢です。そして資料を作る時にもとても重要なポイントになります。
まとめるだけでは意味がない
ここでいう「データ」というのは具体的には会社の経営や営業の数字のことです。
資料はただ集めたデータをまとめて、はいおしまい、ということでは残念ながらほとんど役に立ちません。ちょっとコンパクトにまとめたくらいだったら、別に元データを少し時間をかけて眺めればほしい情報は手に入る。
ただデータをまとめるだけでは仕事をしたことにならない(といったら言い過ぎかもしれませんが)。
資料というのは切り口によってできあがりが大きく違ってきます。特に社内資料、たとえば会議やミーティングなどで使うものの場合、「その資料をもってどうしたいのか」、ということが何より重要なわけです。
「データ」を「資料」にする
データをまとめた時、付け加えなければいけない点は3つあります。
・そこから何が言えるのか?
・そのために何をすべきか?
ということです。
これはよくコンサルタントが問題解決のために使う質問で、そこからどれだけ精度の高い仮説を導き出せるかでそのコンサルタントの評価が大きく変わってしまう、そんな要となる部分かもしれません。
なぜそうなったのか
データをまとめたら、「なぜそうなったのか」という自分なりの見解を示す必要があります。
たとえば前年より売上が落ちていたら、前年と今年は何がどう違うのかを調べる必要があるし、それが人為的なものなのか、トレンドや気候といった、どちらかというと外的な要因なのかも明確にしておかなければなりません。
要するに原因をはっきりさせる、ということです。
そこから何が言えるのか?
原因をはっきりさせたら、今度はそれが会社全体にどのような影響を与えているのか、そして今後どのような対策を打てばいいのか、といった仮説と具体案を提示する必要があります。
データというのは結果ですから、後からいじることはできません。ですが、同じデータからいくつもの仮説を立てることはできます。
そのために何をすべきか?
たとえば売上を上げる方法というのは基本的には
・客数を増やす
・客単価をアップさせる
この二つしかありません。
そのために何をするの?ということですね。
前年はイベントをやって集客をしていたんだけど、よく考えたら今年は実施していなかった。あるいは競合他社に合わせて安売りをしていたので、今年はワンランク上の高価格帯の商品やサービスを開発して売り込もう、そんな感じです。
データに基づいて改善すべき問題を発見し、そこから何が言えるかアウトプットし、最後に改善のためにどうすればいいか、その具体案を示す。
そこまでの情報が付加されてはじめて「資料」になります。
というのも、資料を作る目的は「会社を動かすこと」だからです。こう書くとちょっと大げさに感じるかもしれませんが、少なくとも僕は資料を作る時はそれくらいの気持ちで作ることにしています。
資料で一石を投じる
ちなみに自分なりの見解、仮説が受け入れられなかったとしても問題ありません。大事なことは発生している問題や課題について「一石を投じること」だからです。
会社というのは一気に悪化するということはまれで、たいていは毎日少しずつ少しずついろんなところで問題が発生し、会社という船の底にいくつもの小さな穴が開き、長い年月をかけて船底に水がたまっていきます。
あるいは水から少しずつ温度を上げていくといずれカエルが茹で上がってしまう、というのもそういう理由からです。つまり僕たちはどんな環境でも慣れてしまえるし、小さな変化に鈍感になっていく、ということです。
だからこそ、ちょっと刺激的な仮説を投じることで、自然と波紋が広がる、その波紋が「あ、これはまずいことになっているな」という感覚を呼び戻す役目を果たしてくれます。
資料に目を通した人間が翌日からでもなんらかのアクションを起こしたくなる(あるいはそうせざるを得なくなる)、それくらいの資料作りを目指す必要があると思います。
どれだけ時間をかけるか
時間は限られています。日常業務があるわけですし、資料作りにそれほど多くの時間を費やすことはできない。ではその限られた時間に即効性のある資料を作るにはどうすればいいのか?
ポイントは2つあって、ひとつは「結局なんのための資料だっけ?」ということを忘れないこと。
もうひとつは自分が読み手だったらわかりやすいか、ということです。
そこでまずは一定のスパンでデータにネガティブな変化がみられる部分にから目をつけていきます。会社にとって影響力の大きい部分、損失が大きい部分から手を付けていく。
次にわかりやすさ。わかりやすいということの基準は
・ロジカルである(根拠がないのは論外)
・やさしい言葉を使う
・図やグラフを多用
・カラフル(ただし意味のある色使いで)
・簡潔
ということです。
特に情報を共有するということはみんなの頭の中に共通のイメージ、具体的な絵、あるいは映像が流れていなければいけないということです。
なので、専門用語とか、解釈が分かれそうな難解な単語は使うべきではありません。極端に言えば、「子供でもわかる言葉で書かれていてパッと見ただけでわかる資料」が理想です。
PowerPointを使う
僕も入社したての頃はほとんど文章だけで資料を作っていました。報告書とかレポート、あるいは資料作りといったものはそういうものだ、という固定観念があったと思います。また、細かいデータも入れ過ぎて、完全に自己満足に陥っていたと思います。
目的に沿わないデータが混在していると資料全体がなんとなくぼんやりとして、何を伝えたいのかわからなくなります。すべてのデータが網羅されていることがイコールわかりやすさではない、ということです。
で、今はどうしているかというと、マイクロソフトの「PowerPoint」を使っています。これ、本当に便利ですね。
Microsoft PowerPoint2016 (最新)|カード版|Win対応
大きな文字でカラフルで、そこにグラフや画像データを貼り付ける。A4のたった一枚の資料で強烈な印象を与えることもできます。
KINGSOFT Office 2016 Complete Edition
人は「わかる」と動く
データや文章だらけの資料を何枚も置かれても、たいていの人は全てに目を通すことはしません。作った本人にとっては最高の資料かもしれませんが、伝わらなければ自己満足で終わり。「ああ、よく作ったね、ご苦労さん」です。
基本的に会議をする目的は行動を起こしてもらうことです。というか、会議をしても誰も行動が変わらないとしたら、その会議は完全に時間の無駄だった、ということです。
「いや、何回も口を酸っぱくして言っているんだけどね」と言ってみたところで、結果的に変化が生まれなければやはりそれは無駄な時間なんです。
人を動かす方法というのはいろいろあるのかもしれませんが、僕は仕組みとしてはそれほど複雑ではないんじゃないかと思っています。
これは自分自身に当てはめて見ればよくわかります。僕はどちらかというと単純な方だからというのもあるんでしょうけど、自分が納得して「あぁ、そういうことなんだ」とストンと腑に落ちたことというのはびっくりするくらい簡単に受け入れられるものです。
逆に人は「わからないこと」に対してはビクともしません。人がテコでも動かない、という時はただ「先が見えなくて不安だから」という理由であることが本当に多いです。それだけ、わかるように伝える、ということは大切です。